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非営利活動法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会の公式ホームページです。母乳育児支援にかかわる専門家のための非営利団体です。

母乳育児Q&AQ AND A

6.避妊

出産後5ヵ月で母乳育児をしています。まだ生理が始まりませんが、知らないうちに妊娠するのではないかと心配です。
確実に避妊するにはどうすればよいでしょうか。
 まだ赤ちゃんも小さく,次の月経を見ないうちに妊娠することがあるのをご存じな ので心配なのですね。妊娠を心配しながらセックスするとリラックスできず,十分楽 しめないかもしれません。 避妊を考えることはあなたの健康を守り,また家族の生活も安定させます。このことを真剣に考えていらっしゃるのは素晴らしいことですね。
 授乳中の避妊法については LAM(ラム)という方法があります。これは授乳中排卵 が抑制されることを利用して避妊する方法です。

LAM(Lactation Amenorrhea Method) (授乳性の無月経を利用する方法)

赤ちゃんが母乳だけを飲んでいる場合は(時として1年以上)お母さんが無月経だっ たり月経不順になることはよく見られます。特に出産後 6ヵ月間はお母さんの排卵が 始まる確率は非常に低いと言われています。(これを授乳性の無月経と言います)そのため授乳しているだけで自然の避妊ができると言われています。ただしこれを確実 な避妊法として使うには次の条件をすべて満たすことが必要です。
1. 出産後6ヵ月以内であること
2. 赤ちゃんは母乳だけを飲んでおり,他のもの(人工乳,果汁,おしゃぶりなど) を与えられていないこと。
 昼間は4時間,夜間は6時間以上空けないで,赤ちゃんの欲しがるときに欲しがるだけ授乳していること。一日最低6回以上は授乳していること。
3. 無月経であること(出産後56日以降,性器出血がまったくない)
 30ヵ国以上の実施報告で避妊効果は98.8~100%と言われています。
 出産後6ヵ月をすぎた場合やLAMの条件に当てはまらない場合,他の避妊法を使用することが必要です。

LAM以外の主な避妊法として下記のものがあります。詳しくは下記の表をご覧下さい。

リズム法 1. カレンダー法
     2. 排卵予測法
     3. 症候体温法

バリア法 1.コンドーム(男性用,女性用)
     2.ペッサリー
     3.殺精子剤

IUD   1.なにも付加しないもの
     2.銅付加したもの

経口避妊薬
ミニピル
卵管結紮
精管切除

*避妊の失敗について:避妊しても妊娠してしまうことはありますが,複数の避妊法を 併用することによって効果がさらに確実になります。
*性感染症について:性感染症を予防する唯一の方法はコンドームです。特に カップルのどちらかに性感染症の可能性があるときはそのことについて話し合 い,診断がつくまでは(他の避妊法を使用していても)コンドームを併用することが大切です。

*母乳をあげているときのセックス
母乳をあげているときにもセックスに積極的になれる女性とおっくうになる女性がい ます。女性によっては、セックスをすることも授乳することも、同じように自然な生 活の一部で、楽しいことだと捉えている人もあります。一方,パートナーに愛情を感じてはいるのですが,愛情を他の形で確かめたい人もいます。このように両極端に分 かれてしまうことは自然なことです。女性がセックスに気持ちが向かないときは,女 性はパートナーに自分の気持ちを伝え,またパートナーの気持ちにも耳を傾け,二人で納得の方法を見つけることで更に愛情を深めることができるでしょう。

*避妊の有効性
性交をする以上,100%有効な避妊法はありません。また各種避妊法にはメリットとデメリットがあります。
それぞれのカップルで,どのくらいの期間避妊したいのか,どのくらいの確率で避妊したいのか,実際何なら実行可能なのかはそれぞれ違います。セックスや避妊について話し合うことを照れる人もありますが,話し合ってお互いに満足できる方法を見つけられるとよいですね。

避妊法の種類 方法 1年間の
失敗率(%)
メリット デメリット
理想的使用 一般的使用
使用せず 避妊法を何も使わないとき 85 85    
LAM 上記参照 0-1.2    避妊具,薬剤を使用する必要がない   LAMの条件に合わないときは使用できない
リズム法 基礎体温,子宮頸部粘液から受胎可能期間を判断し,禁欲する 1-9 25 避妊具,薬剤を使用する必要がない   性行動が予測できないときは不適
1).カレンダー法  月経6周期の長さを記録し,最短月経周期の期間から18日を引いて受胎可能期間の始まりとし,最長月経周期の期間から11日を引いて受胎可能期間の終わりとする     同上 月経不順,月経周期を記録していないときは判断できない授乳中で排卵周期が一定していないときは使用できない
2).排卵期予測法 頸管粘液の状態を触ったり見たりして知る          同上 膣炎,子宮頸管炎のときは判断を誤る可能性がある
3).症候体温法 頸管粘液と基礎体温を併用する      同上 同上
膣外射精法 膣外で射精する 4.0 18.0   射精前から精液が少量でている可能性がある
失敗が多い
男性用コンドーム 陰茎の勃起後,装着する 3 14 使用が容易感染症の予防として唯一の方法 適切に装着しないと効果が下がる性交の度に装着する必要有破れると妊娠する可能性有り
女性用コンドーム ポリウレタン性のパウチ(小袋)で膣の内側を覆う     女性が装着を決定できる男性の勃起と関係なく装着できるゴムアレルギーでも使える出産後や更年期でも膣の違和感が少ない 装着に慣れが必要
ペッサリー 医師の診察によりサイズを決定する.性交前6時間以内に膣内に装着する.挿入前に殺精子剤をペッサリーのくぼみに塗布する.性交後6時間は装着したままにしておく 6 20 安価で耐久性がある副作用が非常に少ない 経口避妊薬使用者と比べて尿路感染の割合が高い
24時間以上装着したとき膣粘膜を刺激する可能性がある
単独使用では妊娠する確率が比較的高い
殺精子剤 精子の細胞膜を損傷する物質をふくむ 6.0 26 安価で処方箋なしで購入できる簡単に使用可 射精の10?30分以内に使う必要有り 単独使用では妊娠率が高い
コンドームと併用すると失敗が少ない
IUD(リッピスループなど) 付加なし   3.0 出産後の避妊に適する わずかに挿入時の骨盤内感染のリスクがある
他のIUDに比べてやや妊娠率が高い
IUD(銅付加) 銅の付加により避妊効果が高い 0.8 <1.0 出産後の避妊に適する       避妊効果高い 最初数ヶ月の出血,月経痛増強の可能性がある      
経口避妊薬 エストロゲンとプロゲスチンの合剤 0.1 5.0 避妊効果高い           副効用として月経困難症や過多月経にも有効 エストロゲンにより母乳分泌量が減少し,母乳育児期間が短縮する傾向にあるため,授乳中は勧められない
WHOでは産後6週間以内で授乳中の女性には使用禁忌となっている
ミニピル プロゲスチン単独のピル 0.5 5.0 授乳中にも使われる場合がある   現在までの研究では児への長期的な影響はないとされている 乳汁に移行する        授乳への影響はほとんどないとされているが,母乳分泌の確立や赤ちゃんのステロイド代謝への影響を考慮して出産後6週間まで見合わせた方がよいとの報告もある
卵管結紮 入院,麻酔下で手術 0.5 0.5 避妊効果は100%ではないが,高い   通常出産後数日以内に行われる
入院,麻酔が必要なため,一時母子分離を余儀なくされる可能性がある
もし再び妊娠を希望するときは体外受精が必要になる
精管切除 局所麻酔により外来で手術可能    0.1 0.15 避妊効果は100%ではないが,高い  精液検査により手術の効果を確認できる     局所感染をおこす可能性有り
効果がでるまで3ヶ月以上かかりやすい          その後の失敗が稀にある その後の妊娠を希望するときは精巣内精子を使う方法をとることがある
 【参考文献】

  1. 金森あかね: 母乳育児と妊娠 助産婦雑誌 vol 56(6) p454-459,2002
  2. Miriam H. Labbok,: Effects of Breastfeeding on the Mother. Pediatric Clinics of North America 48: 143-158, 2001
  3. ピル博士のピルブック ジョン・ギルボー著,早乙女智子監訳,メデイカルトリビューン,2001
  4. 綾部琢哉 経口避妊薬 産科と婦人科 VOL 68.Suppl p 243-249,2001
  5. 改訂版だれでもできる母乳育児 ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル,メデイカ出版,2000
  6. Breastfeeding and Human Lactation : Ruth A.Lawrence,Mosby ,1999
  7. 避妊ガイドブック Leon Speroff, Philip D.Darney 我妻堯監訳,早乙女智子編訳 文光堂,1999
  8. 母体保護統計報告1999年 厚生統計協会
  9. The Breastfeeding Answer Book, revised edition: La Leche League International, 1997