タイトル

JALCの声明
 「母乳サイエンスミルクほほえみ」の名称変更を求める申入書
 ダイオキシン問題に対する声明(1999)
 小さなお子さま連れで、学習会に参加されることについて
 
ダイオキシン問題に対する声明
 
日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)は、断乳の是非を判断するための個人の母乳のダイオキシン汚染濃度の測定や母乳の安全基準の設定、早期断乳指導などの介入に反対します。

 日本ラクテーション・コンサルタント協会 (JALC) は、母乳育児が乳児を育てるための最良の選択であり、乳児にとっても母親にとっても基本的な権利であることを支持します。医学的に母乳育児が禁忌だという非常に稀なケースや汚染物質の大量混入事故などの明らかな危険の可能性のある場合を除いては、何者もその権利を脅かすことのないようにと、この声明を出します。

  世界保健機関(WHO)は、1998年にダイオキシン類の耐容一日摂取量を1〜4pgに見直すことにし、日本でも1999年に一日耐容摂取量をWHO並に4pgに見直すことになりました。しかし、母乳育児を推奨するというWHOや厚生省の今までの方針に変更はありません。
 母乳育児は、乳児の健康や発達に理想的で、呼吸器疾患、消化器疾患、ガンを含めた数々の病気の予防になり、母親の婦人科系のガンの発症を予防する働きもあり、母子のきずなを深めます。乳児を母乳で育てることは、粉ミルクなどの乳児用の商品にかける費用が節約できるだけではなく、将来の肥満、糖尿病の予防にもなり、医療費を一生の間節約できます。 一方、人工乳は、栄養的にも完全に母乳と同じものとはいえず、母乳に含まれているような免疫物質も入っていません。また、人工乳を作るために使われている物質は母乳が汚染されたのと同じ環境にあるだけでなく、たとえば、日本で起きた「ひ素」混入事件や、放射能の粒子やサルモネラ菌が混じっていて回収された海外の例など、その製品加工の過程において汚染されている可能性を否めません。

 母乳育児は環境問題の解消に寄与します。母乳は、直接乳児に飲ませる限り汚染の可能性は最小限で、粉ミルクのように生産、輸送、広告にかけるような資源をむだづかいしませんし、哺乳びんやミルク缶の廃棄処理の必要がないため、大地、大気、水を汚染しません。 母乳検査をもとに母乳を早期にやめたほうがいいという指導はまったく根拠がありません。母乳は脂肪量や汚染濃度が一日の中でも一定ではなく、検査方法自体も同じ条件で行われていないので、1回の結果だけで個人の汚染レベルを判断することは不可能と言えます。

 母乳の中のダイオキシン類の濃度は年々減り1970年代と比べて半減しています。ダイオキシン類の胎児への悪影響を表わす研究はありますが、汚染していても母乳を与え続けたほうがかえって悪影響を相殺するという研究もあります。かつて個人の母乳検査を行っていたドイツでも、その指導が引き起こした混乱を反省し「離乳食を始めるまでは完全母乳で乳児を育て、その後も離乳食を与えながら母乳育児を続けても危険はない」と宣言しています。また、長年母乳のPCB汚染を研究し続けているアメリカの研究者も、例えPCBの汚染がある場合でも母乳の方が、しかも長く飲ませるほど脳が発達していたと結論づけています。

 環境問題を真剣に考えるならば、個人の検査のために税金を使って母乳への不安をあおるよりも、むしろ汚染物質を積極的に私たちの環境から取り除くために使うべきでありましょう。
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小さなお子さま連れで、学習会に参加されることについて
  
  私たち日本ラクテーションコンサルタント協会、JALCは、母乳育児がスタンダードなこととして社会に受け入れられ、また多くの人たちに母と子のきずなの大切さや母乳育児の楽しさを伝えることをコンセプトの一つと考えています。JALC学習会にも、母乳育児支援の専門家をはじめ母乳育児に興味をもつあらゆる立場の方たちに参加していただきたいと考えております。また授乳中の母と子がいつも一緒にいることのできる社会づくりを応援する立場から、授乳中のお子さまと一緒の参加を大いに歓迎いたします。 そしてこの学習会会場が、母乳育児をごく自然に当たり前とする優しい社会の第一歩となることを願っています。


<お子さまをお連れになったお母さまへ>

小さいお子さまを連れて学習会に参加してくださった熱心さに感謝いたします。 講義中もどうぞいつでも自由に授乳なさってください。 私たちは、自分の子どもの ニーズを最優先に考える女性たちを応援します。 出入りしやすい場所に、お子さまを休ませることのできるスペースを用意しておりますので、どうぞご利用下さい。何かお手伝いが必要でしたらスタッフまで声をかけてください。


<会場の皆さまへ>

学習会の場に小さいお子さまがいることに慣れない方がいらっしゃるかもしれません。小さいお子さまは、機嫌の良いときほどよく通る声を出したり、動き回ったりします。ひどく集中力を妨げることがなければ、お子さまのそうした自然な行動を温かく見守ってあげて下さい。もし目にあまると思われるときはどうぞ近くのスタッフへご一報下さい。皆さまの温かな御理解と御協力で、大きな学びのある学習会にいたしましょう。
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「母乳サイエンスミルクほほえみ」の名称変更を求める申入書
 日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)は、2005年3月14日に明治乳業が母乳サイエンスミルクほほえみという名称の人工乳を発売するとの情報に対して、日本母乳哺育学会、日本母乳の会3者協同で下記のような申し入れを行いました。この申入書については、数日間で13団体および個人486名が賛同の意志を表明し、連名での申し入れとなりました。この結果明治乳業は名称を変更しました。

株式会社明治乳業 御中     2005年3月10日


 「母乳サイエンスミルクほほえみ」の名称変更を求める申入書


 私たちは母乳育児の支援、研究に携わる専門家の団体です。
 私たちは貴社と同じく、赤ちゃんの成長・発育・発達のためには母乳が最良であると考えており、母乳育児の保護・推進・支援のために、WHOの「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」(以下、国際規準)を支持しています。

 貴社が3月14日に発売予定としている「母乳サイエンスミルクほほえみ」の名称は、WHOの「国際規準」の第9条1,2および「不当景品類及び不当表示防止法の第4条第1項1号、消費者保護基本法第10条、第4条第1項に違反しており、私たちはその名称の変更を求めます。

 現在の人工乳が栄養学的に一定の優れた品質を示していることは周知の事実です。
しかし、だからといって人工乳が完全に母乳に置き換えられるわけではありません。母乳の意義は栄養に限定されたものではなく、今でも免疫学的効果などについては、人工乳が母乳に比べ遥かに及ばないことは明白な事実です。
 最新の医学研究によっても人工乳による哺育は、母と子ともに多くの病気のリスクが高いことが明らかにされ、母乳育児には社会経済学的・環境生態学的利点があることも明らかにされています。

 よって、私たちが赤ちゃんと母親の健康のためにまず為すべきことは、母乳育児の確立に向けてあらゆる努力を傾けることです。そのために母乳育児に伴う様々な障害を取り除きこそすれ、母乳育児をけっして妨害してはならないと思います。
 1981年のWHO総会において、母乳育児の保護・推進・支援の目的で、乳業メーカーによる人工乳その他の母乳代用品の不適切な販売活動を規制する「国際規準」が圧倒的多数の賛成を持って決議され、日本政府も1994年のWHO総会でこれに賛成し、貴社も加盟するところのInternational Association of Infant Food Manufacturers(IFM)も、この「国際規準」の理念と目的に賛同し支持していることは貴社も知るところであります。
 貴社は日本を代表する乳業会社であり、貴社には不適切な母乳代用品の販売活動を行わないとする「国際規準」を遵守すべき社会的・倫理的・道徳的責任と義務があるといえます。

 しかし、貴社が3月に発売予定としている「母乳サイエンスミルクほほえみ」の名称はWHOの「国際規準」に違反しています。
 「国際規準」の第9条1では「製品の正しい使用に必要な情報を与え、しかも母乳育児を妨げないように意図されるものとする」とされており、また9条2では「乳児用ミルクの使用を理想化するような絵または言葉を使ってはならない」とされています。

 また「不当景品類及び不当表示防止法」第4条第1項1号には、「商品又は役務の品質、規格その他の内容につて、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争関係を阻害するおそれがあると認められる表示」をしてはならないとあります。

さらに、消費者保護基本法には、「消費者が商品の購入若しくは使用・・・に際しその選択を誤ることがないようにするため、商品・・・について、品質その他内容に関する表示制度を整備し、虚偽又は誇大な表示を規制する等必要な施策を講ずる」ことを国の責務とし(第10条)、事業者に、自ら「その供給する商品・・・について、危害の防止、適正な・・・表示の実施等必要な処置を講ずる」ことを義務付けるとともに、「国又は地方公共団体が実施する消費者の保護に関する施策を協力する」責務を負わせている(第4条1項)となっています。

 貴社は「母乳サイエンスミルクほほえみ」の宣伝文において、同人工乳が「栄養学的に母乳に限りなく近づいた」と記載しています。しかし、栄養学的側面以外、たとえば免疫学な側面においては人工乳が母乳に劣っていること、人工乳の使用により赤ちゃんや母親に様々な病気のリスクが高くなるという人工乳と母乳についての正確な科学的事実の記載はまったくありません。 

 消費者(母親)がその使用にあたって知っておくべき正確な事実を明らかにせず、「栄養学的に母乳に限りなく近づいた」という宣伝しながら、人工乳に「母乳サイエンスミルク」という名称を冠することは、消費者に「母乳サイエンスミルクほほえみ」が栄養学的側面以外においても母乳に近づいたという誤解を与えてしまうものであります。
 人工乳の名称において「母乳化された」(humanized, maternalized)という言葉が使われたことがありました。しかし、この表現は人工乳が母乳になったわけではなく、不正確であるという理由で国際規準においても使用が禁止されています(9条2)。

 「母乳サイエンスミルクほほえみ」の名称も同様に、「母乳サイエンス」という名称をつけることであたかも「科学的研究」の結果、人工乳が母乳と同じものとなったという誤った印象を消費者に与えるものです。

 以上より私たちは、赤ちゃんと母親にとって最良のものである母乳と母乳育児を守るため、貴社に「国際規準」を遵守することを求め、新しい人工乳の名称から「母乳サイエンス」の言葉を削除し、その名称を変更することを求めます。

 私たちの求めに対し、2005年3月17日までに文書でご返答をいただくことを要望いたします。
(ご返答の宛先は、〒065-0023 札幌市東区北23条東1丁目7番5号 日本ラクテーション・コンサルタント協会事務局までお願いいたします。)

日本母乳哺育学会 理事長 小林登
日本母乳の会 運営委員長 橋本武夫
日本ラクテーション・コンサルタント協会 代表 越山茂代
(五十音順)
    

以上の申し入れに賛同する13団体および個人486名(名称は省略)

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