タイトル


日本内分泌学会「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」に関連するパブリックコメント
 
 
 2014 年 11 月 20 日
  
 大阪大学大学院医学系研究科小児科学 大薗 恵一 先生 御侍史

 NPO 法人日本ラクテーション・コンサルタント協会は,母乳育児を支援する専門の国際資格である国際認定ラクテーション・コンサルタント (IBCLC) を中心に構成する団体です.会員は,乳幼児と周産期の母親に関わる助産師・小児科医・新生児科医・産婦人科医を含む多職種の,主として保健医療専門職です.
 最近,マスメディアで,母乳育児がくる病のリスク因子であるかのように取り上げられ,母乳だけで育てることへの不安や混乱を一般の人々に引き起こしていることを憂慮しています.このたび,日本内分泌学会がパブリックコメントを募集しておられることを知り,ぜひ,この件に関してのご配慮をお願 いしたく,以下のコメントを送ります.
 
NPO 法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会 学術委員会
奥 起久子(亀田総合病院 新生児科)IBCLC, FABM*
瀬尾智子(星ヶ丘マタニティ病院小児科)IBCLC, FABM*
滝島 茂(草加市立病院 小児科)IBCLC
e-mail: takishima-tmd@umin.ac.jp
FABM:(Fellow of Academy of Breastfeeding Medicine)
  
 くる病・骨軟化症の診断マニュアルに「くる病として発症した症例は,くる病の診断指針に準じる」との記載がございます.この記載に関連して,日本小児内分泌学会から出されております『ビタミン D 欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き』を拝見しますと,「ビタミン D 欠乏症罹患のリスクが高い因子について問診する。完全母乳栄養、母親のビタミン D 欠乏、食事制限(アレルギー、偏食、菜食主義等)、慢性下痢、日光曝露不足(外出制限、紫外線カットクリームの使用、冬期、高緯度等)、早産児、胆汁鬱滞性疾患」との記載がございます.
 昨今,2013 年 10 月 17 日(木)の NHK の報道(乳幼児の“くる病”にご注意! http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/10/1017.html)などで,母乳栄養がリスクであるかのよう に印象つけられ,そのことが一人歩きしている現状がございます.
 母乳栄養をすすめるにあたり,母親の食事・栄養,母子の生活環境(適度な紫外線照射),児の補完食 (離乳食)など,留意すべき点はございますが,母乳栄養それ自体は推奨されることであり,リスクとして避けるべきこととは言えず,上記のように併記した場合に誤解されることが懸念されます.
 この点につきましては,本診断マニュアルへのパブリックコメントというよりは,日本小児内分泌学会から出されております『ビタミンD 欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き』に関する意見として申し上げるべき点かと思いますが,その後の社会の受け止めなども踏まえて,この機会に上申させていただきますとともに,本診断マニュアルの作成に際しまして,ご勘案いただきますようお願い申し上げます.
 
 
 ページトップへ