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日本新生児成育医学会「新生児に対する鉄剤投与のガイドライン2017」へのパブリックコメント
 
 
 2017 年 2 月 25 日
  
和田友香(成育医療研究センター病院 新生児科、日本新生児成育医学会会員)
山本よしこ(NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会[JALC]代表)
大山牧子(神奈川子ども医療センター母子保健局地域保健推進部長、
医療局新生児科部長、JALC学術委員会、日本新生児成育医学会会員)
奥起久子(日本母乳哺育学会評議員、JALC教育研究事業部部長、
日本新生児成育医学会功労会員)
瀬尾智子(名古屋市立大学医学部小児科、JALC学術委員会、
日本新生児成育医学会会員)
  
 このたび、日本新生児成育医学会として「新生児に対する鉄剤投与のガイドライン」が改定されますことに、感謝と敬意を表します。以下は、「新生児に対する鉄剤投与のガイドライン2017」に関する、NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会からのコメントです。最終案作成の際に、ご検討くださいますようお願いいたします。

① 今回のガイドラインでは、最終目標を輸血の回避と神経発達と成長の向上においておられます。ガイドラインのサブタイトルが「早産児・低出生体重児の重症貧血予防と神経発達と成長の向上を目的として」ですので、乳児期後期の鉄欠乏性貧血の回避を含めた方が良いと考えられます。是非このあたりの研究も参考にされ新生児期のみならず乳児期後期の貧血予防についても言及ください。

② 今回のガイドラインでは、新生児期以降も視野においていると記載されていますが、実際の推奨は新生児期の投与方法のみがあげられています。臨床現場では、Late preterm児や正期産SGA(もしくはlight for gestational age 児)の、新生児期以降の鉄欠乏性貧血をしばしば経験しますので新生児期以降の投与についても言及ください。この「早期貧血」のリクスが低く「晩期貧血」の予防を主目的とするグループについても別の項があると良いと考えられます。

③ 4ページ目 CQ1 推奨1-1、1-2、CQ2 補足2-1、2-2に記載されている「栄養方法に関わらず」の部分について:
母乳栄養児では鉄欠乏性貧血のリスクが高く、AAPのガイドラインなど既存のガイドラインや成書にも鉄剤投与を考慮するべきだと記載されています。よって栄養法によって差がないとの記載は誤解を招きますので修正を強く希望します。

参考文献:
1) American Academy of Pediatrics, Committee on Nutrition. Breastfeeding. In: Kleinman RE, ed. Pediatric Nutrition Handbook. 5th ed. Elk Grove Village, IL: American Academy of Pediatrics; 2004:55–85
2) Griffin IJ, Abrams SA. Iron and breastfeeding. Pediatr Clin North Am. 2001;48:401–413
3) Dewey KG, Cohen RJ, Rivera LL, Brown KH. Effects of age of introduction of complementary foods on iron status of breastfed infants in Honduras. Am J Clin Nutr. 1998;67:878–884
4) Pisacane A, De Vizia B, Valiante A, et al. Iron status in breast-fed infants. J Pediatr. 1995;127:429–431

④ 4ページ目 CQ1 推奨1-1
「早産児に対しては、栄養法に関わらず、新生児期に経口鉄剤投与を行うことが望ましい。」

「早産児に対しては、栄養法に関わらず、離乳食が確立するまで経口鉄剤投与を行うことが望ましい。」とする方がより具体的で分かりやすいガイドラインと考えます。

⑤ 4ページ目 CQ1
補足1-1として「正期産SGA、Late preterm児では乳児期後期に鉄欠乏性貧血となるリスクが高くフォローアップが必要である。」と追記してはいかがでしょうか。
  
以上
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