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厚生労働省「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)の一部を改正する省令(案)
(調製液状乳に係る規定の設定)」へのパブリックコメント
 
 
 2018年5月31日
NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)
文責:田中 奈美
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標記の一部改正案について、以下 提案をさせていただきます。

 健康増進法において、乳児を対象とする食品「乳児用調製粉乳」は、成分規格を定め安全性の確保を図っているにもかかわらず、「乳児用調製液状乳」については、他の乳及び乳製品と同等の扱いとなっているため、乳児のための母乳代用品としての使用に懸念があること。

指摘根拠は、以下の通りである。 
  1. 改正省令案(五)(13) に「自動販売機の中に乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料又は乳飲料を保存する場合には、当該食品を密せん又は密閉してある容器包装のまま保存すること。」と記載されている。このことから乳児用製品が一般の製品と同等の扱いになっている。
  2. 資料1-1(平成30年3月)、資料1-2(平成30年2月28日)、資料1-4(平成30年4月19日)より、開封後は菌が増殖することがわかっている。誤った使用方法によって乳児に重大な健康被害が懸念される。
  3. Codexの規定(参考2-3 Standard for infant formula and formulas for special medical purposes intended for infants, Codex Stan 72, 1981, revision: 2007)では、乳児用調整乳は乳製品の一部ではなくより保護と注意の必要な製品として位置付けられている。例えば、Codexの規定の中には牛乳がベースの調整乳以外のもの(大豆乳など)も包括したうえで、第9項でより厳密な扱いを規定している。
  4. 本来、「乳児用調製粉乳」は、消費者庁が許可する「特別用途食品」に該当しており、「乳及び乳製品」ではない1)。「乳児用調製粉乳」を「母乳代用品」とするのであれば、その成分は「特別用途食品」と同等である必要がある。細菌数の変動については論文を付すなど根拠となるデータを示しているが、栄養については栄養成分の項目変動のみ記載されており、詳細な乳児栄養に関する記述が不足している。
  5. 「薬事・食品衛生審議会 器具容器包装・乳肉水産食品合同部会には、乳児の健康の専門家である小児科専門医が含まれていないことから、当該製品を乳児に与えることの妥当性・安全性について、十分な検討がされているとはいえない懸念がある。
以上の指摘根拠を踏まえて、以下、提言する。
  1. 厚生労働省は母乳育児を推進し保護すべき立場にある。WHOの「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」(「以下、国際規準」)を遵守し、当該製品によって、母乳で育てたい母親までが販売促進の標榜とならないよう努めること。
  2. 本省令改正にあたり関連省庁(消費者庁)とも緊密に連携していただきたい(Codex第9項に従うこと。例えば、当該製品に関する健康上の効能を記載しない。誤用による健康被害の喚起。開封後の取扱注意。表示は母乳育児を阻害しないように国際規定に乗っ取った「重要項目」を必ず書くなど。これらの多くは「国際規準」にも明記されている)。
  3. 保育所等において、搾母乳を預かり乳児へ与えることの重要性について、保育者への教育および保育所設置管理者等への指導を徹底すること。
  4. 災害時に備蓄する場合、母乳育児をきちんと支援・保護し、調製液状乳が必要な母子にのみ行きわたるようにするための方策をとること。また、備蓄したものの賞味期限が切れそうだからと行政等で無差別に配布することがないよう注意すること。
  5. すべての乳児の健康を守るため、乳児用調整液状乳の取り扱いに関しては、ほかの乳製品とは別により厳密な規定を策定すること。開封後の飲み残しを捨てることなど、食品の安全性にかかわる表示を必ずすること。特に自販機の規定は乳児用については該当させないこと。(Codex及び「国際規準」では、「母乳育児の優位性についての明記、この製品は、どのような場合に必要かということ、および適正な使用法についての助言を保健医療従事者から受けた場合のみに使用するべきであるという記載」を重要な記載義務としている。自動販売機ではこれを満たすことはできない。)
  6. 乳児用調製液状乳に関する「安全な取扱い及び保存に対するガイドライン」を作成すること。また、作成したガイドラインの周知に努力すること。本ガイドライン作成においては,乳児栄養の専門家(小児科専門医)や「WHO母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」に詳しい母乳育児の専門家を含めていただきたい。

参考文献
1)消費者庁「特別用途食品」平成30年5月30日検索 http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/syokuhin88.pdf
以上
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