『災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会』より 緊急リリース

お母さんを援助している方、及び、メディア関係者の方へのお願い(転載可)

 緊急時だからこそ母乳育児を支援してください!

紛争や災害を抱える多くの国で支援活動をしている国連児童基金(ユニセフ)と世界保健機関(WHO)が出した「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」には、次のように書いてあります。

『乳幼児は、自然に、もしくは人為的に引き起こされた災害の際にはもっとも脆弱な犠牲者となります。母乳育児の中断や不適切な補完食(注:離乳食のこと)は、栄養不良、疾病、死亡率のリスクを増加させます。例えば難民キャンプで無差別に母乳代用品(注:粉ミルクや哺乳びん)を配布するような行為は、早期かつ不必要な母乳育児の中止をもたらしかねません。ほとんどの乳幼児に対しては、母乳育児の保護、推進、支援、および適切な時期に安全で適切な補完食が与えられるという保証に重点がおかれなければなりません。母乳代用品で育てなければならない乳児も常に少数は存在するでしょう。適切な代用品が供給されなければなりません。そして、それが通常使用される一連の食品や医薬品の一部として、調達され、配布され、安全に与えられなければなりません』(日本ラクテーション・コンサルタント協会訳)

 授乳中のお母さんには特別なニーズがあります!

災害時の授乳中のお母さんには、人工乳ではなくお母さんのための食べ物や飲み物が十分に行き届くようにお願いします。なぜなら、赤ちゃんを母乳で育てるのに加えて、年長の子どもたちや子ども以外の家族を世話するためにも元気でいる必要があるからです。小さな赤ちゃんのいるお母さんが集まって安心して、くつろいで授乳できるスペースの設営が理想的です。

 非常時こそ母乳が大切です!

母乳育児は赤ちゃんの命を救います。母乳育児は完全無欠の栄養を赤ちゃんに与えます。さらに、母乳の中の感染防御因子が、非常事態で流行する可能性のある下痢や呼吸器感染から赤ちゃんを守ります。一方、安全な水や、お湯を沸かす燃料のない場所での人工乳の使用は、栄養不良、疾病、乳児死亡のリスクを高めます。母乳育児を続けることで、お母さんも子どもも慰められ、心の支えが得られます。

 お母さんには精神的なサポートが必要です!

一方で、授乳中のお母さんは摂取カロリーが極端に不足すると母乳の分泌が低下することがあります。ストレスで一時的に母乳の出が悪くなっているお母さんには精神的なサポートをお願いします。母乳が足りなくなって、人工乳が必要になると、避難中の貴重な水や燃料、消毒のための資源を消費することにもなります。そして、人工乳は本当にそれが必要な赤ちゃんにきちんと行き渡るようにお願いします。

 支援と報道に配慮をお願いします!

脆弱な子どもたちと同様に「授乳中のお母さんには特に十分な食べ物が行き届く」よう配慮がぜひ必要です。
母乳育児中のお母さんが安心して授乳を続けられるような支援、報道の配慮をお願いいたします。

2004年10月31日作成:
■■災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会■■ 

なお、日本ラクテーション・コンサルタント協会とラ・レーチェ・リーグ日本では、被災された方のために無料で母乳育児相談に乗っています。

■■問い合わせ■■
(援助者向き):info@jalc-net.jp(NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会)
(被災されたお母さん専用):hisai_support@llljapan.org(ラ・レーチェ・リーグ日本)

参考資料:
WABA:「グローバル化」時代の母乳育児 2003年
BFHIニュース、ユニセフ 1999年9月/10月
WHO/ユニセフ「乳幼児の栄養に関する世界的な戦略」2003年(2004年訳)