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NCPR:蘇生を必要としない新生児の初期処置に関する部分の記載修正の提案

日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 宛

NCPR:蘇生を必要としない新生児の初期処置に関する部分の記載修正の提案

2025年5月19日

 

NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)

奥 起久子(学会会員、NCPRコア・インストラクター、新生児科医)
斎藤 誠(学会会員、NCPRコア・インストラクター、小児科医)
丸山 憲一(学会会員、NCPRインストラクター、新生児科医)
甘利昭一郎(学会会員、NCPRインストラクター、小児科医)
小林絵里子(NCPRインストラクター、助産師)
早田茉莉(学会会員、NCPRインストラクター、小児科医)
田中 奈美(学会会員、NCPRインストラクター、産婦人科医)
滝 元宏(学会会員、NCPRインストラクター、小児科医)

 

蘇生を必要としない新生児の初期処置を、ILCORの指針のように母親の上で行うことが選択しやすくなるよう、記載の修正・追加を提案します。

 

理由

ILCOR2020、および2025ドラフトでは蘇生を必要としない新生児の初期処置に関する部分の記載は、低体温防止の方法を講じつつ母とskin to skinすることになっています。

ところがNCPRテキスト4版(2021年)では、1か所を除いて「母のそばで」という表現になっていること、低体温防止の方法としてラジアントウオーマーの使用が強調されているため、ILCORで記載されている母の胸の上で保温する方法は禁止されているという誤解が生じ、その選択肢が排除されてしまうことがあるという現状があります。

1か所とは、p52下から5~8行目、下記の記載です。

「出生直後の新生児において蘇生が必要かどうかの判断は、(中略)。それらすべてを認めない児に対しては、母の胸部上または側のラジアントウオーマー下でルーチンケアを行う。」(細野茂春先生記載部分)

ここではILCORの記載に沿った記載になっているので、誤解を招かないためにも、他の部分でもこの表現が統一して記載されるよう提案します。

 

具体的な提案

1、NCPRテキスト4版およびアルゴリズム図の、「母親のそばで行う」という記載を、母親の胸の上で行う選択肢が可能な表現に修正する。
例えば、「母親のそばで行う*」 *母親の上で行う選択肢も含む と注を入れる。もしくは、「母の胸部上または側で」とすれば、注は不要となる。(テキスト4版:p14図表、p53図表、p67図表、12行目文章、p68 3行目文章、p156スライド15、16、p157スライド17、インストラクターマニュアル5版:p35図表、アルゴリズムポスター、それ以外の要修正箇所は把握できておりません)

2、NCPRテキスト4版にある「ラジアントウオーマー等を使用して低体温防止に努めながら」という具体的な説明文(p67、4行目)を、ラジアントウオーマーのみが選択されないような表現とする。
例えば、アルゴリズムの部分(p52)に合わせて、 「母の胸部上または側のラジアントウオーマー下で」と記載を統一していただく。

3、母の胸の上での初期処置の写真を、テキストやスライドに1枚追加する。

例えば、米国NRP Ver 8では添付のような母の上で児を処置する写真がテキストに掲載され、この写真はラジアントウオーマー上での処置の写真よりも大きく扱われている。写真が追加されれば、日本での母の上での初期処置は禁止されているという認識が修正される効果が期待できる。

 

参考となる情報

ILCOR 2020:Newborn infants who are breathing or crying and have good tone and an adequate heart rate may undergo delayed cord clamping and should be dried and placed skin to skin with their mothers to prevent hypothermia.アルゴリズムの図では、Term gestation? Breathing or crying? Good tone? → Yes,stay with motherです。

2025ドラフト:As consistently recommended by the Neonatal Life Support (NLS) Task Force, newborn infants who are breathing or crying and have good tone and an adequate heart rate may undergo delayed cord clamping and should be placed skin-to-skin with their mothers, using methods to maintain a normal body temperature.

米国小児科学会NRP(Neonatal Resuscitation Program)においても、欧州の新生児蘇生ガイドライン(European Resuscitation Council Guidelines)においても、ILCORに準じて、母と一緒(with mother)ないし母の胸の上という表現になっています。

1、 Myra H、et al: Neonatal Life Support:2020 International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care ScienceWith Treatment Recommendations, Circulation. 2020;142(suppl 1):S185‒S221.

2、 2025 International Liaison Committee on Resuscitation Consensus on Science With Treatment Recommendations、Neonatal Life Support https://ilcor.org/uploads/NLS-2025-COSTR-Full-Chapter.pdf

3、 Weiner GM, et al.:AAP Textbook of Neonatal Resuscitation、8th ed, 2021(p40~41を添付)

4、 Madar J, et al.:European Resuscitation Council Guidelines 2021: Newborn resuscitation and support of transition of infants at birth. Resuscitation. 2021;161: 291- 326(p293

 

注:ここに記載していた、AAP Textbook of Neonatal Resuscitation,8th ed,2021、p40~41の引用画像は著作権の関係で削除しています。

 

連絡先:NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)
事務局 〒112-0012 東京都文京区大塚5-3-13-3F
提言代表者:奥 起久子
[email protected]

 

以上、PDFはこちら