母乳育児は赤ちゃんと母親の双方に多くの恩恵をもたらします。(総論1) 母乳には赤ちゃんに必要な栄養素や免疫細胞が含まれ、感染症のリスクを下げる効果があります。また、アレルギー予防や知能発達への寄与、さらには生活習慣病予防の可能性も示唆されています1,2)。母乳育児は母子の絆を深め、母親の心理的安定にも寄与します。母親にとっては、産後の体重減少や子宮収縮を助け、乳がんや卵巣がんのリスクを軽減する可能性があると報告されています3)。
母乳分泌はお産後すぐ、赤ちゃんに頻繁に吸ってもらうことで促進されます。(Q4) 赤ちゃんは急速に成長するため、その要求に応える形で授乳やお世話の時間が多く必要となります。職場復帰(Q17)を予定している母親は、搾乳(Q18)や支援者の協力を得る方法について準備を進めることが重要です。家族(Q14)や公的支援を組み合わせて、産後の生活がスムーズに進むよう計画することが大切です。
妊娠中、ホルモンの働きによって乳腺が発達し、母乳育児の準備が整えられます。お産後は赤ちゃんと触れ合いながら授乳を続けることで、母乳は十分に作られます。出産後赤ちゃんに触れ合うこと、また母乳量が安定するまでは、赤ちゃんに合わせた授乳乳や搾乳が推奨されます。このリズムで乳房への適切な刺激を維持し、母乳分泌を促進しましょう4)。
授乳に痛みや困難を感じたら、お近くの国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)や専門の支援者に相談できます。(Q16) 赤ちゃんが吸えない場合は搾乳を活用し、状況に応じて母乳育児を柔軟に進めることができます。適切なサポートを受けながら、自分と赤ちゃんに合った方法で母乳育児を続けていきましょう
【参考文献】
- World Health Organization. Breastfeeding. https://www.who.int/health-topics/breastfeeding (Accessed January 1, 2025. )
- American Academy of Pediatrics. Breastfeeding and the Use of Human Milk. Pediatrics.2022;150(1):e2022057988. https://publications.aap.org/pediatrics/article/150/1/e2022057988/188347/Policy-Statement-Breastfeeding-and-the-Use-of (Accessed January 1, 2025. )
- Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Breastfeeding and breast cancer risk. Lancet. 2002;360(9328):187-195.
- Skin-to-Skin Contact. https://www.unicef.org.uk/babyfriendly/baby-friendly-resources/implementing-standards-resources/skin-to-skin-contact/ (Accessed January 1, 2025 )
【文責】山下有加 昭和大学医学部産婦人科学講座 (産婦人科医・IBCLC)
【ピアレビューアー】大坪三保子
【完成年月日】2024年12月1日
【免責】この情報は医学的な診断や治療の代替となるものではありません。詳しくはかかりつけ医とご相談ください。