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母乳育児と赤ちゃんのアレルギーとの関係は複雑で、まだ研究が進んでいる最中です。アレルギーによっておこるとされている赤ちゃんの病気には、湿疹、喘鳴(ぜんめい、息がゼロゼロと荒くなること)、牛乳アレルギーや卵アレルギーなどがあります。このうち、母育育児でリスクが下がると多くの研究で確認されているものは、喘鳴です。しかし、牛乳アレルギーなど他のアレルギーについては、研究によって結果がまちまちで、まだ結論がでていません。

ところで、研究者たちが、母乳育児とアレルギーの関係について研究を進めているのはなぜでしょうか?それは、母乳には赤ちゃんの腸の粘膜を保護したり、免疫の働きを整えたり、体に良い働きをする腸内細菌(いわゆる善玉菌)を育てる物質がたくさん含まれていたりするからです。母乳のおかげで赤ちゃんの腸が健やかであれば、牛乳などの食物に対してアレルギーを起こしにくくなるのではないかと考えられていて、それを確かめるために、現在も研究が進んでいるのです。

出生直後の3日間に母乳以外のものを飲まなかった赤ちゃんは、牛乳アレルギーになりにくかったことが示されました。妊娠中や出産時に適切な支援があれば、出生直後の3日間母乳だけで育てることが達成されやすいので、他のQ&Aも助けになります。母乳だけで育てることを続けると、アレルギーの原因となりやすい物質が、腸にたくさん入ることもありません。

最近、牛乳アレルギーを予防するために、ミルクも飲ませた方がいいですか?とご質問を頂くことがあります。生まれてすぐに病院でミルクを飲んだ赤ちゃんが、退院後にミルクを飲まなくなった場合には牛乳アレルギーのリスクが上がるという研究もあります。しかし、まだ十分に研究されていないため、牛乳アレルギーを予防するためにミルクを少し飲ませる、という方法は、学会などからは推奨されていません。

# アレルギー全般についての情報は以下のサイトが信頼できます。

<アレルギーポータル>日本アレルギー学会、厚生労働省

https://allergyportal.jp (2024/12/26アクセス)

 

【参考文献】

  1. 水野克己 (2023) 母乳育児とアレルギー pp237-249 Inよくわかる母乳育児 改訂第3版 ヘルス出版
  2. 環境再生保全機構 (2022) 食物アレルギーが起こる仕組み Inよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック 2021改訂版 pp44-45 https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/archives_31321.pdf (2024/12/24アクセス)
  3. 多田香苗 (2024) 母乳とアレルギー In 母乳育児支援スタンダード 第3版 医学書院 (in printing)
  4. 人工乳による牛乳アレルギー予防の可能性を示唆する報道等に対するJALCの見解 https://jalc-net.jp/data/p_seimei202012.html (2024/12/24アクセス)
  5. Dupont C, et al; Committee on Nutrition of the French Society of Pediatrics. Cow’s milk-based infant formula supplements in breastfed infants and primary prevention of cow’s milk allergy: A commentary of the Committee on Nutrition of the French Society of Pediatrics. Arch Pediatr. 2023 Nov;30(8):591-594.

 

【文責】多田 香苗 (小児科専門医・アレルギー専門医・IBCLC)

【ピアレビューアー】鈴木佳奈子 中村和恵 名西恵子  

【完成年月日】2024年12月05日

【免責】この情報は医療従事者と話し合うための一般的な手引きです。各々のご家庭や状況に応じて使用してください。