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長く授乳を楽しみたいお気持ちがあるのに、職場復帰のことを考えると戸惑う時期がくるのではないかと心配なのですね。

職場復帰を予定しているから哺乳びんに慣れておかないといけない、混合栄養にしておかないといけない、ということはありません。実際は職場復帰を控えていても直接授乳を楽しまれている親子はたくさんおられますし、職場復帰は母乳育児の終わりを意味するものではありません。保育園に入園した後も搾った母乳(搾乳)を与えたり、一緒にいられる時間には直接授乳をしたりと親子が望むだけ母乳育児を楽しむことができると嬉しいですね。お母さんと赤ちゃんの生活に合わせて授乳を続けたいとお考えであれば、できれば産前から母乳育児に理解のある支援者や支援グループ、実際に経験したお母さん達に相談して、仕事と授乳について家族で話し合う機会があるとよいかもしれません。

職場復帰後も母乳育児を続けることでさまざまなメリットがあると言われています。「おっぱいタイム」は親子それぞれにとって心のよりどころです。お子さんは保育園など新たな環境や人に慣れなければいけないなかで、登園前や帰宅後、お休みの日にお母さんの「おっぱい」に戻れることは大変心強いものです。お母さんにとっても、仕事で離れたあとにお子さんと再会して授乳をすると、親子の結びつきを強く感じ、精神的なきずなが持続します。保育園から帰宅後いったん授乳をすると、お子さんも安心して機嫌よく遊び始めるし、お母さんも気持ちをリセットしてほっとできるというお話はよく聞きます。

 

食事をこれからすすめるお子さん

  • 搾乳を預けて飲ませてもらう

搾乳は、保育施設へ搾母乳を届けるためだけが目的でなく、定期的に搾乳をすることで、母乳分泌を維持させることができます。職場復帰2週間くらい前から搾乳の練習をしておくとスムーズです。搾乳の方法や回数の目安、保存の仕方についてはQ18「搾乳はどうやってするの?」を参考にしてください。

  • 職場での搾乳スペースと時間の確保

職場に搾乳専用のスペースがある場合は活用しましょう。もしなければ、休憩時間などを利用して搾乳できる環境を整えてもらえるよう上司や人事に相談してみてください。母乳育児を続けるお母さんは法律で保護されており、1日2回30分ずつの育児時間を取る権利があります(育児・介護休業法に基づく)。他にも母乳育児に関する法律は資料1「母乳に関連した法律のまとめ」にまとめましたのでご参考にしてください。職場の理解が得られない場合は、資料2「雇用主への手紙」を参考に、小児科のかかりつけ医に雇用主への手紙を書いてもらうこともできます。職場に託児所がある場合などは、仕事の合間に授乳に通う方法もあります。

  • 自宅での授乳を大切にする

保育園から帰宅した後や休日は、直接授乳で親子のきずなをさらに深めるチャンスです。お子さんと一緒にいる時に授乳を続けることは母乳の分泌を維持する最も楽な方法でもあります。働き始めてしばらくすると、一緒にいる時はたくさん母乳が出て、仕事中はそんなに乳房は張らなくなってきますので、その都度搾乳をしなくても分泌が維持されるようになります。出勤直前と帰宅直後に直接授乳すると職場での搾乳回数も少なくてすみますね。

  • 家族や周囲のサポートを頼る

育児と仕事を両立するには、家族や周囲の協力が欠かせません。特に、保育園などの預け先で搾乳した母乳を赤ちゃんに飲ませてもらう場合には、事前に相談しておくと安心です。資料1「母乳に関連した法律のまとめ」、資料3「赤ちゃんにやさしい保育園」をご参考にしてください。

また、哺乳びんをいやがる場合もあるかもしれません。そんな時は保育者や保育場所に慣れ信頼関係を作ることが大切で、安心すると飲めるようになることが多いです。慣らし保育で2~3時間預け、送迎時に直接授乳するといった段階を踏むとよいでしょう。また入園前の準備として、お母さんは直接授乳、ほかの家族や慣らし保育で保育士さんに哺乳びんに慣らしてもらうようにするとスムーズにいくことがあります。あまり早くから哺乳びんを使うと母乳の出が悪くなったり、お子さんが乳房から飲みたがらなくなったりする可能性があります。哺乳びん以外の方法 (コップ、スプーン、スポイトなど)もあります。コップでの授乳は資料4を参考にしてください。

 

食事がすすんでいるお子さん

母乳以外から水分や栄養をたっぷり取るようになってくると、園ではご飯と栄養のあるおやつ、家庭ではこれまで通りに母乳をあげることも可能です。そうすると搾乳はいらなくなりますね。預けはじめの頃、離れているときに乳房が張るときには、圧を抜くくらいに軽くしぼると楽になります。月齢とともにスタイルは変化しますので、その月齢に応じたリズムを徐々に作れるようになってくるとお母さんもお子さんも楽に過ごせます。

 

職場復帰後も、お母さんとお子さんにあった授乳方法とリズムで母乳育児を楽しめることを願っています。

 

資料

 

【参考文献】

  1. 入部博子(2025) 働く親の母乳育児 In NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会編 母乳育児支援スタンダード 第3版 医学書院 pp320-327
  2. NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本「働きながら母乳を続けるヒントとコツ」 https://store.llljapan.org/products/detail/9

 

【文責】森丘千夏子 (小児科専門医・新生児専門医・IBCLC)

【ピアレビューアー】五十嵐祐子 古賀浩子 引地千里  

【完成年月日】2025年3月6日

【免責】この情報は医療従事者と話し合うための一般的な手引きです。各々のご家庭や状況に応じて使用してください。