MENU

MENU

MENU

MENU

information

どんな時に搾乳をした方がいいのかしら、搾乳はどのようにするのかしらと不安に思っていらっしゃるのですね。

母乳育児は、赤ちゃんにとって最適な栄養を提供するだけでなく、お母さん自身にとっても多くのメリットがあります。しかし、さまざまな事情で直接授乳が難しい場面では、搾乳が母乳育児を継続する上で大きな助けとなります。

たとえば、赤ちゃんが早産で入院しており直接授乳ができない場合や、お母さんが職場に復帰する場合、あるいは乳房の張りやしこりを緩和したい場合、母乳分泌の維持を目的とする場合などに搾乳が有効です。

搾乳を行う際は、まず楽な姿勢でリラックスすることが大切です。直接授乳ができない状況であっても、肩の力を抜いて座り、赤ちゃんのことを想ったり、赤ちゃんの写真や動画を見たりすると、母乳の分泌を促すホルモンが分泌されやすくなります。出産直後から早期に搾乳を開始することで、その後の分泌量を確保しやすくなります。搾乳の前には乳房を温めたり、自分の手で乳房マッサージをおこなったりすると、リラックスして母乳が出やすくなる傾向があります。

搾乳には「手搾り」「手動搾乳器」「電動搾乳器」の3つの方法があります。

手搾りを行う際は、まず石けんで手をよく洗い、清潔な容器を準備します。乳頭の消毒は必要なく、かえって皮脂を取り除いてしまい、痛みの原因になる可能性があります。搾る際は、親指と人差し指を乳輪の外側に置き、乳房を胸壁方向へやさしく押しながら、乳首方向へ圧をかけていきます。この動作をリズムよく繰り返すことで、母乳が自然に出てきます。左右交互に行うとより効率的です。出産直後の初乳期には1回あたり5~10分、母乳分泌を増やす目的では20分程度が目安とされています。実際の方法は資料1の動画をご参考にしてください(2分55秒~)。

手動搾乳器や電動搾乳器を使用する場合は、ご自身が使いやすく、痛みを感じにくい機器を選ぶことが大切です。長期間の使用が想定される場合には、電動搾乳器がより負担を軽減できることもあります。両側の乳房を同時に搾乳できるタイプは、時間効率の面でも有用です。搾乳器の使用後には、手搾りを加えることで、より効果的に母乳を出すことができます。

搾乳の回数は、赤ちゃんの授乳状況や月齢によって異なります。たとえば、赤ちゃんが入院中などで直接授乳できない場合には、赤ちゃんが飲む回数と同程度の頻度で搾乳を行うことで、分泌の維持につながります。職場復帰などにより赤ちゃんと一定時間離れる場合は、その離れている時間に応じて搾乳の頻度を調整します。目安として、離れる時間が4時間以内の場合には搾乳の必要はほとんどありませんが、4~6時間であれば1回程度、8時間以上離れる場合は3時間ごとの搾乳が推奨されます。1歳以降で離乳が進んでいる場合は、乳房が張った際に軽く圧を抜く程度で十分です。

搾乳した母乳は、保存方法に気をつけて使いましょう。目安の時間は以下を参考にしてください。

  • 常温( 25℃以下): 4時間(理想的)~6時間(許容)
  • 冷蔵( 4℃以下):72時間(理想的)~5日間(許容)
  • 冷凍( -18℃以下):6か月間(最適)~12か月間(許容)

冷凍母乳は、冷蔵庫でゆっくり解凍するか、ぬるま湯で温めます。電子レンジは栄養が損なわれるため使用しない方がよいでしょう。

もし、乳房に痛みや赤みが生じた場合は、早めに医師や助産師に相談しましょう。また、母乳の出が悪いと感じた場合も、自分の手で射乳反射を促すマッサージをしたり、リラックスを心がけたりしながら、無理のない範囲で搾乳を継続してください。

搾乳は、お母さんの生活や赤ちゃんの状況に応じて母乳育児を支える大切な手段です。ご自身のペースで無理なく取り入れながら、安心して母乳育児を継続していただければと思います。

資料1: 手で母乳を搾る方法 

※以下のリンク先はYouTubeの動画です。音声が流れたり、広告が表示されたりすることがあります。広告内容は本資料と一切関係ありません。

https://www.youtube.com/watch?v=3bh_gyImJEM

 

【参考文献】

  1. 母乳育児支援スタンダード第3版. 日本ラクテーション・コンサルタント協会編集 医学書院2025
  2. 母乳育児ハンドブック. 日本小児医療保健協議会(四者協)栄養委員会編集 東京医学社2022
  3. NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本オフィシャルサイト「母乳のしぼり方:手を使って」 https://store.llljapan.org/products/detail/8
  4. NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本オフィシャルサイト「小さく生まれた赤ちゃん~低出生体重児を母乳で育てるために~」 https://store.llljapan.org/products/detail/4
  5. NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本オフィシャルサイト「働きながら母乳を続けるヒントとコツ」 https://store.llljapan.org/products/detail/9
  6. NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本オフィシャルサイト 「授乳のヒント 手で搾乳する方法を教えてください」 https://llljapan.org/faq60/

 

【文責】森丘千夏子 (小児科専門医・新生児専門医・IBCLC)

【ピアレビューアー】五十嵐祐子 古賀浩子 引地千里  

【完成年月日】2025年6月4日

【免責】この情報は医療従事者と話し合うための一般的な手引きです。各々のご家庭や状況に応じて使用してください。