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Q:放射線の影響を避けるためにはヨウ素がいいと聞きました。海藻や昆布茶をたくさん摂取した方がいいのでしょうか? 

A:ネットを中心に口コミなどで、昆布などの海藻が放射線防御に効果があるような話を聞いたので、それが本当なのか困惑されているのですね。

 結論だけを申し上げると、日常生活ですでに積極的に海藻類や昆布だし、昆布茶などを取り入れている方では、それ以上の海藻類の摂取は、甲状腺機能低下症を招く恐れがあるため、危険です。また、ヨウ素剤の代わりにうがい薬などを飲み込むのも、無効な上に危険です。

 その理由を、順を追って説明しましょう。

 放射能もれ事故の際に、被ばく後の甲状腺がんの発症予防のためにヨウ素の大量投与が行なわれるのは事実です。それについては次項の「ヨウ素剤に関して」を参照くだされば、わかりやすいかと思います。
 しかし、ヨウ素の大量投与に用いる量は大人で100mgと多量で、食物などから摂取できる量ではありません。もちろんヨウ素剤の代わりにうがい薬などを飲み込むのも危険です。うがい薬などは内服薬ではなく、ヨウ素以外の成分が多く含まれ、体に有害な作用を及ぼす可能性のある物質も含まれます。たとえ飲んだとしても、ヨウ素含有量が少なく、効果がありません。(資料1)

 また、ヨウ素の大量投与で甲状腺がんの発症を押さえる可能性が示唆されたチェルノブイリ周辺と日本では、通常でのヨウ素の摂取状態に大きな差があるため、一概にチェルノブイリの事故の時の経験を当てはめることができません。
 日本では、ヨウ素を含む海藻類やヨウ素を含むうがい液などの摂取によるヨウ素過多を原因とする甲状腺機能低下症の発症のリスクが高い地域で、ヨウ素の欠乏状態にあったと見られる、内陸部であるチェルノブイリ周辺とは状況が異なります。

 チェルノブイリなどの内陸部では海藻類の摂取が少ないため、一般的にヨウ素欠乏状態にあることが多いのです。その状態で、放射性ヨウ素を体内に取り込むことになったため、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積しやすく、甲状腺がんが多発したと考えられています。

 日本では、昆布を調理の基本に用いる食文化のため、他の民族に比べて一般的な状態でのヨウ素の摂取量が多いことがわかっています。

 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)(資料2)によると現在推定されている日本人のヨウ素平均摂取量は1日1.5mgで、成人の推奨量0.13mgの10倍以上です。ヨウ素の耐容上限量は1日2.2mgなので、昆布茶を1日2杯飲めば上限量を超えます。(1杯(2g)には0.4mgのヨウ素が含まれます。)
 上限量を上回る摂取は甲状腺機能を低下させます。特に妊娠中は胎児の甲状腺機能が低下しやすいです。妊娠中の昆布茶の飲みすぎ)や海藻の多食などでの新生児の甲状腺機能低下がよく報告されています。日常的に海藻をよく取っている方は、ふだんから上限量を超えていたり、上限量に近かったりする可能性もあります。ふだんからバランスよく適度の海藻類を食卓に取り入れている平均的なご家庭においては、昆布茶や海藻類を今まで以上に飲んだり食べたりする必要はありません。

Q:ヨウ素剤とは何ですか? 

A:安定ヨウ素は甲状腺ホルモンが合成されるときに必要となる重要な物質です。ヨウ化カリウムは安定ヨウ素の薬剤で、被ばくした場合には甲状腺がんを予防する目的で内服します。
 原発からの放射性ヨウ素が取り込まれる前に内服する必要があり、医師や保健所からの指示があれば速やかに内服することをおすすめします。なお、安定ヨウ素の効果は約24時間で、服用前後に速やかに危険地域から退避できる状況であることが必要です。指示のない場合に服用した場合、甲状腺のヨウ素の取り込みの状況が変化し、服用しない場合よりも甲状腺がんの危険性が増すこともありえます。

Q:ヨウ素剤とは何ですか? 

A:ヨウ素剤を飲むと何か副作用があるのではと思い心配なのですね。

 過去にヨウ素剤が配布されたポーランドでの事例や医療現場での使用経験から、ヨウ素剤の1回内服での重大な副作用の発生は極めてまれで、赤ちゃんや子どもの場合と同様に妊娠中や授乳中の女性についても副作用に注意しながら甲状腺がんの予防を優先するべきでしょう。

 吐き気や嘔吐、下痢といった消化器症状や皮膚が赤くなるなどの過敏症状が見られることがありますが、いずれも次第に収まります。ただし過去にヨード過敏症と診断された方は副作用に注意が必要で、ヨウ素剤の内服は避けるべきとされています。被ばくの程度も考慮した上で専門医への相談をお勧めします。

 また、乳幼児や妊娠中の女性がヨウ素剤を服薬した場合は、その児や胎児に甲状腺機能低下症が起こる可能性があるため、医師による甲状腺機能の経過観察が必要となります。

Q:現在妊娠中あるいは授乳中です。ヨウ素剤を飲んでも赤ちゃんに影響はありませんか?

A:妊娠中・授乳中にはご自分はもとより、子どもへの影響が気がかりなのですね。

 安定ヨウ素剤の服薬は、放射性ヨウ素の影響を受けて将来甲状腺がんを発症しやすい、胎児や乳幼児では、他の年齢以上に価値のある予防措置です。

 上記のように、妊娠中の服薬は出生後の赤ちゃんに、また、乳幼児はヨウ素剤を飲んだ本人に、甲状腺機能低下症の可能性があります。乳幼児において甲状腺ホルモンは脳の発達と成熟にとても重要で、甲状腺機能低下症が続くと成長や知的発達に影響します。そのためヨウ素剤内服後はお子さんの甲状腺機能の定期的検査が必要となります。

Q:赤ちゃんが生まれる前にヨウ素剤を内服しました。生まれた赤ちゃんにもヨウ素剤を飲ませた方がいいですか?

A:赤ちゃんが生まれる前にヨウ素剤を内服されたのであれば、もうお母さんと赤ちゃんは安全な地域に避難されているのですね。その状況であれば、生まれた赤ちゃんへのヨウ素剤の内服は不要です。下記にありますように、生まれた赤ちゃんは、定期的な甲状腺機能の検査が必要になります。

Q:これから定期的に検査を受けた方がいいですか?

A:上記のように甲状腺機能低下症をきたす可能性があるため、乳幼児は安定ヨウ素剤服薬後、定期的な甲状腺機能の検査が必要になります。日本小児内分泌学会より安定ヨウ素剤投与関連の管理指針が出されました。(資料19)

参考文献

  1. ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません-インターネット等に流れている根拠のない情報に注意-平成23年3月14日(月) 独立行政法人 放射線医学総合研究所
    http://www.nirs.go.jp/data/pdf/youso-3.pdf
  2. 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4al.pdf
  3. 福島原発事故による放射線被ばくについて心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(特に母乳とヨウ化カリウムについて)日本産科婦人科学会 平成23年3月16日
    http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110316.pdf
  4. 被災者の皆様、とくにお子さんをお持ちの被災者の皆様へ 日本核医学会 放射線医学総合研究所(2011/3/18 改訂第2稿)
    http://jsnm.org/press/fukushima/fukushima_report06/
  5. 首相官邸災害対策ページ http://www.kantei.go.jp/saigai/index.html
    平成23 年3 月19 日福島原発事故による妊婦・授乳婦への影響について 日本産婦人科医会
    http://www.jaog.or.jp/News/2011/sinsai/fukusima_0319.pdf
  6. 福島県における水道水中の放射性物質の検出について(3月22日) 厚生労働省健康局水道課
    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000015uci.html
  7. 水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内 平成23年3月24日 日本産科婦人科学会
    http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110324.pdf
  8. 妊娠されている方、子どもを持つご家族の方へ-水道水の健康影響について-(2011/3/24) 日本医学放射線会
    http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=912
  9. 福島原子力災害での放射線被ばくによる健康影響について平成23年3月25日 日本疫学会理事会
    http://wwwsoc.nii.ac.jp/jea/news/pdf/20110325seimei.pdf
  10. 福島原発事故による妊婦・授乳婦への影響について(2) −汚染農産物の出荷停止と乳児の水道水摂取を控える通知に対して冷静な対応を−平成23年3月25日 日本産婦人科医会
    http://www.jaog.or.jp/News/2011/sinsai/fukusima_0325.pdf
  11. Hashke, F., et.al., Radioactivity in Austrian Milk after the Chernobyl Accident, N Eng J Med, February 12 1987; 316:409-410.
  12. Lechner W, Huter O, Daxenbichler G, Marth C., Radioactivity in breast milk after Chernobyl, Lancet,1986 Jun 7;1(8493):1326.
  13. Di Lallo D, Bertollini R, Perucci CA, Campos Venuti G, Risica S, Simula S., Radioactivity in breast milk in central Italy in the aftermath of Chernobyl, Acta Paediatr Scand. 1987 May;76(3):530-1.
  14. ミネラルウォーター Wikipedia (2011.3.24 12:05時点) http://ja.wikipedia.org/wiki/
  15. Is bottled water really unsafe for making up infant formula? Osborn K,Lyons M. COMMUNITY PRACT, 2010, 83:31-34
  16. Harrison JD, Smith TJ, and Phipps AW, Infant doses from the transfer of radionuclides in mothers’ milk. Radiat Prot Dosimetry. 2003;105(1-4):251-6
  17. Hale TW, Medication and Mother’s Milk, Hale Publishing, 2010, p521.
  18. 放射性ヨウ素への被ばくに対し安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を予防服用した妊婦から出生した児および同じく小児の管理指針-初期管理編-(第1版)日本小児内分泌学会 平成23年3月31日
    http://jspe.umin.jp/shinsai.htm http://kodomo-kenkou.com/cretin/info/show/666
    http://kodomo-kenkou.com/cretin/info/show/667
  19. 福島県各地の放射線レベル http://plixi.com/p/94127512(東大理学部早野教授作成データ)
  20. 日本産科婦人科学会「大気や飲食物の軽度放射性物質汚染について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内 (続報)」
    http://www.jsog.or.jp/news/pdf/Q&A_20110418.pdf(4 月18 日付け)
  21. 同「同続報に係るQ&A」
    http://www.jsog.or.jp/news/pdf/Q&A_20110418.pdf(4 月18 日付け)

 

 

 

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